2010年11月
2010年11月27日
正義の話
知人から薦められて、ハーバード大学マイケル・サンデル教授の人気講義を書籍化した「これから『正義』の話をしよう」という著書を読んでみた。
アマゾンで1位、5月初版で9月には85刷という大ベストセラー本である。
要するにこの書籍は、「人間のある行為が、正義に適うかどうか。
そして正義とは何か」を論じた内容。
ベンサムの「最大幸福」哲学(功利主義)、J・スチュアート・ミルの「自由論」、M・フリードマンのリバタリアニズム(自由至上主義)、ルソーの「社会契約論」、カントの哲学「純粋実践理性」、J・ロールズ「正義論」、アリストテレスの「目的論的思考」等々を引用しながら現代人の抱える問題を整理し、一定の方向性を与えるべく論を進める。
こんなに難解な本を本当にみんなちゃんと読んだのか?という疑問が湧く。
でも考えてみると、目先の株価の変動に振り回され、いつの間にかマネーの奴隷と化した現代人の何とも言えない閉塞感に覆われた生活、「何が本当に正しいのか」という悲痛な問いに答えを欲している人は多いのかも知れない。
「共通善」を志向する著者が最後にJ・F・ケネディとバラク・オバマの宗教観の違いを指摘し、バラク・オバマの「共通善」への志向性を肯定する。
著者の主張は「正義は功利性や福利を最大限にすること(最大多数の最大幸福)だけではない。
公正な社会は、ただ効用を最大化したり選択の自由を保証したりするだけでは、達成できない。
公正な社会を達成するためには、善良な生活の意味をわれわれがともに考え、避けられない不一致を受け入れられる公共の文化をつくりださなくてはいけない」の部分(P.335)と理解したのだが。
まんわ経営労務ホームページ
http://www.manwa55.net/
アマゾンで1位、5月初版で9月には85刷という大ベストセラー本である。
要するにこの書籍は、「人間のある行為が、正義に適うかどうか。
そして正義とは何か」を論じた内容。
ベンサムの「最大幸福」哲学(功利主義)、J・スチュアート・ミルの「自由論」、M・フリードマンのリバタリアニズム(自由至上主義)、ルソーの「社会契約論」、カントの哲学「純粋実践理性」、J・ロールズ「正義論」、アリストテレスの「目的論的思考」等々を引用しながら現代人の抱える問題を整理し、一定の方向性を与えるべく論を進める。
こんなに難解な本を本当にみんなちゃんと読んだのか?という疑問が湧く。
でも考えてみると、目先の株価の変動に振り回され、いつの間にかマネーの奴隷と化した現代人の何とも言えない閉塞感に覆われた生活、「何が本当に正しいのか」という悲痛な問いに答えを欲している人は多いのかも知れない。
「共通善」を志向する著者が最後にJ・F・ケネディとバラク・オバマの宗教観の違いを指摘し、バラク・オバマの「共通善」への志向性を肯定する。
著者の主張は「正義は功利性や福利を最大限にすること(最大多数の最大幸福)だけではない。
公正な社会は、ただ効用を最大化したり選択の自由を保証したりするだけでは、達成できない。
公正な社会を達成するためには、善良な生活の意味をわれわれがともに考え、避けられない不一致を受け入れられる公共の文化をつくりださなくてはいけない」の部分(P.335)と理解したのだが。
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2010年11月20日
ガラパゴス農政
以前このFAX NEWSで取り上げた(Vol.158)日本の農業の世界に類を見ない補助金率の高さ。
一体日本の農政は誰のために多額の税金を投じているのか?という内容。
そこで紹介したのは、日本の農業生産額に対する突出した補助金比率(日本は58.0%:例えば農業者が、大根1本を100円で出荷するまでにその大根1本に対し国の補助金が58円投じられている計算になる。
オーストラリアの補助金は4円)、そして莫大な無駄遣いとも思える長期プロジェクトの圃場整備事業41兆円の効果(国の減反政策推進で農地面積拡大は果たせないまま:日本5.2百万ha、フランス29.6百万ha、オーストラリア447.0百万ha)。
そしてやはり今年も耳にしたのは、夏の猛暑で米の品質が悪化、このままでは米価が下がり農業者の収入減に繋がるため追加で補助金云々の話。
政権交代しても何も変わらない。
なんでこうなるのか、全く理解できない。
日本のコメ消費は年間1000万トン、例えばこれをオーストラリアで生産するとしたら、そのための水田購入費はわずか200億円で済むらしい。
また世界一肥沃な土壌チェルノーゼム(黒土)で知られるウクライナで最大の食糧会社ランドコムも200億円もあれば買収できる。
これを国策会社にして、ここで生産すれば日本の全人口が食べきれないほどの小麦や大豆が調達できるそうだ(大前研一著「最強国家ニッポンの設計図」)。
グローバル化と円高の今こそ食糧安保に世界戦略の視点が必要なのでは。
いつまでも生産者を崇めるガラパゴス農政で本当に良いのだろうか?
まんわ経営労務ホームページ
http://www.manwa55.net/
一体日本の農政は誰のために多額の税金を投じているのか?という内容。
そこで紹介したのは、日本の農業生産額に対する突出した補助金比率(日本は58.0%:例えば農業者が、大根1本を100円で出荷するまでにその大根1本に対し国の補助金が58円投じられている計算になる。
オーストラリアの補助金は4円)、そして莫大な無駄遣いとも思える長期プロジェクトの圃場整備事業41兆円の効果(国の減反政策推進で農地面積拡大は果たせないまま:日本5.2百万ha、フランス29.6百万ha、オーストラリア447.0百万ha)。
そしてやはり今年も耳にしたのは、夏の猛暑で米の品質が悪化、このままでは米価が下がり農業者の収入減に繋がるため追加で補助金云々の話。
政権交代しても何も変わらない。
なんでこうなるのか、全く理解できない。
日本のコメ消費は年間1000万トン、例えばこれをオーストラリアで生産するとしたら、そのための水田購入費はわずか200億円で済むらしい。
また世界一肥沃な土壌チェルノーゼム(黒土)で知られるウクライナで最大の食糧会社ランドコムも200億円もあれば買収できる。
これを国策会社にして、ここで生産すれば日本の全人口が食べきれないほどの小麦や大豆が調達できるそうだ(大前研一著「最強国家ニッポンの設計図」)。
グローバル化と円高の今こそ食糧安保に世界戦略の視点が必要なのでは。
いつまでも生産者を崇めるガラパゴス農政で本当に良いのだろうか?
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2010年11月13日
ローマ帝国の失業対策
「就職できない大学生が3割“大留年時代”到来の悪夢」、雑誌に踊るタイトル。今年よりも来年、来年よりも再来年、年々確実に就職の難易度は高まっている。
とうとう国も卒業して3年までは「新卒」と呼ぼうなどと訳の分からない事を言い出した。
しかも、「3年新卒者」の採用に100万円もの持参金を付けて(3年以内既卒者採用拡大奨励金という)。
この若者の就職難は日本に限った話ではなく、欧米先進国や中国その他、世界中の若者たちが就職難にあえいでいる。
これが経済の効率化、グローバル化がもたらした現実の成果である。
先日「ローマ人の物語」を書いた塩野七生(しおのななみ)さんの近著「日本人へ・リーダー篇」を読んだ。
実は、私も「ローマ人」にハマッた一人で、全15巻を夢中で読んだ頃がある。
久しぶりに塩野さんの著書に触れてハッとさせられたのは、
「民衆派と呼ばれているグラックス兄弟からユリウス・カエサルに至る百年間のローマのリーダーたちの政策の基本が、ローマ社会の中間層とも言えるローマ市民の誇りを育むことを常に念頭に置き、例えば紀元前一世紀のローマ軍団を徴兵制から志願制に移行したのも、市民に誇りを育む機会を与える効用を考慮したうえで、ローマ市民の多くに職を与えるための失業対策であった」、「自分自身への尊厳を持てる人が多ければ多いほど、その社会は健全化する。
失業とは生活の手段を奪われるだけでなく自尊心を育む手段さえも奪われることだ」という部分。
現代の為政者たちにも大いに参考になる。即ち、健全な社会を維持するための最優先政策は、自身への誇りが持てるような「雇用対策」以外に無い。
まんわ経営労務ホームページ
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とうとう国も卒業して3年までは「新卒」と呼ぼうなどと訳の分からない事を言い出した。
しかも、「3年新卒者」の採用に100万円もの持参金を付けて(3年以内既卒者採用拡大奨励金という)。
この若者の就職難は日本に限った話ではなく、欧米先進国や中国その他、世界中の若者たちが就職難にあえいでいる。
これが経済の効率化、グローバル化がもたらした現実の成果である。
先日「ローマ人の物語」を書いた塩野七生(しおのななみ)さんの近著「日本人へ・リーダー篇」を読んだ。
実は、私も「ローマ人」にハマッた一人で、全15巻を夢中で読んだ頃がある。
久しぶりに塩野さんの著書に触れてハッとさせられたのは、
「民衆派と呼ばれているグラックス兄弟からユリウス・カエサルに至る百年間のローマのリーダーたちの政策の基本が、ローマ社会の中間層とも言えるローマ市民の誇りを育むことを常に念頭に置き、例えば紀元前一世紀のローマ軍団を徴兵制から志願制に移行したのも、市民に誇りを育む機会を与える効用を考慮したうえで、ローマ市民の多くに職を与えるための失業対策であった」、「自分自身への尊厳を持てる人が多ければ多いほど、その社会は健全化する。
失業とは生活の手段を奪われるだけでなく自尊心を育む手段さえも奪われることだ」という部分。
現代の為政者たちにも大いに参考になる。即ち、健全な社会を維持するための最優先政策は、自身への誇りが持てるような「雇用対策」以外に無い。
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2010年11月06日
ヤシしてでも
来年山口県で開催される国体の強化選手(県外受け入れ)30人と山口県の競技団体が、業務委託契約(年間計8,000万円)を結んでいた事が問題となっている。
これまでは、同様のケースでは企業や体協と雇用契約を結ぶのが通例だったようだが、なぜか山口県では業務委託契約になっていた。
何がどう違うのかよく分からないと思うが、以前キャノン等の大手製造業で問題になったことのある偽装請負の「請負」の部分が正に今問題になっている「業務委託」のことである。
雇用とどこが違うかと言えば、通常「雇用」とは使用者の「指揮命令下」にある訳だが、「業務委託」では委託主の指揮命令を受けること無く、契約内容の業務さえこなせば良いという契約で、換言すれば委託主とはある意味独立した事業主でもある。
この相違から、国体の参加規定
?居住地を示す現住所
?勤務地
?ふるさと制度が定める出身地、のどれにも該当しないのではとの疑念が生じたようである。
雇用契約にしておけば??が不充分でも?の要件ですんなり通っていたのではないかと思う。
実は以前「偽装請負」が問題になったのは、「請負契約」にしておけば使用者側は、社会保険料や労働保険料の負担が無く、しかも残業代を支払う義務も発生しない。
一々労働時間の管理もしなくて済むので、使用者にとっては非常に便利、労働者にとっては非常に不利だったから。
今回の一件で山口県側がそんなセコイことを考えた訳ではないだろうが、「ヤシしてでも一位になりたい」山口県なら少々の偽装も許容したのかも知れない。
「みんな、やっているじゃないか」。
知事も4期ともなれば緊張感も薄れる?
まんわ経営労務ホームページ
http://www.manwa55.net/
これまでは、同様のケースでは企業や体協と雇用契約を結ぶのが通例だったようだが、なぜか山口県では業務委託契約になっていた。
何がどう違うのかよく分からないと思うが、以前キャノン等の大手製造業で問題になったことのある偽装請負の「請負」の部分が正に今問題になっている「業務委託」のことである。
雇用とどこが違うかと言えば、通常「雇用」とは使用者の「指揮命令下」にある訳だが、「業務委託」では委託主の指揮命令を受けること無く、契約内容の業務さえこなせば良いという契約で、換言すれば委託主とはある意味独立した事業主でもある。
この相違から、国体の参加規定
?居住地を示す現住所
?勤務地
?ふるさと制度が定める出身地、のどれにも該当しないのではとの疑念が生じたようである。
雇用契約にしておけば??が不充分でも?の要件ですんなり通っていたのではないかと思う。
実は以前「偽装請負」が問題になったのは、「請負契約」にしておけば使用者側は、社会保険料や労働保険料の負担が無く、しかも残業代を支払う義務も発生しない。
一々労働時間の管理もしなくて済むので、使用者にとっては非常に便利、労働者にとっては非常に不利だったから。
今回の一件で山口県側がそんなセコイことを考えた訳ではないだろうが、「ヤシしてでも一位になりたい」山口県なら少々の偽装も許容したのかも知れない。
「みんな、やっているじゃないか」。
知事も4期ともなれば緊張感も薄れる?
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